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空気ばね と 動体視力              [近藤 武]


 少年の家は、線路沿いにあった。 小学校二年の時から与えられた三畳の部屋は、一番線路に近かった。 北側に位置する線路と家を隔てるのは、万年塀といわれたコンクリートの塀なのだが。 少年はそこに登ってまたがりながら、何時間も何分かおきに通る電車を見ていた。

 小学校三年、東京オリンピックの頃、空気ばねを採用した新車特急が走り出す。 重量挙げのバーベルのようなリングプレイの台車を、見逃すまいと速度に対抗した。 すぐに、乗ってる人の顔まで写真のように視覚に焼き付ける目線の使い方を、少年は会得する。  オイルダンパー、コイルばね、板ばね。 空気ばね。   

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